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住生活を改善するIoTのトレンド

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2019.3.28

以下、日経BP社の記事抜粋。

https://project.nikkeibp.co.jp/atcljsdj/symposium/02_2/

日経BP総研では、IoT技術を活用した住生活に関連する新たなサービスについてトレンド調査を実施した。ここから3つのトレンドが浮かび上がった。日経BP総研の桑原豊・上席研究員が具体的な事例を交えながら報告する。

 

 日経BP総研では、国土交通省の「サステナブル建築物等先導事業(次世代住宅型)」の一環として、新たなサービスのトレンド調査を実施しました。その結果から、以下のような3つの流れがあると分析しています。

  1. 既存の技術の組み合わせや応用
  2. 「つながる」「動く」の先へ、サービス形態やプレイヤーが変容
  3. サービサーのパートナーシップ戦略

 

 1つめは、既存の技術を組み合わせたり応用したりすることで、新たなサービスを生み出す例が増えてきているということです。重要な要素技術はある程度出揃っていて、それらをうまく組み合わせることで新しいサービスを生み出す動きが活発だとみています。

 

 2つめが、様々なデバイスを連携したり音声で動かしたりすることができるようになり、既存のサービスの形態にとらわれず、新たなビジネスモデルに取り組み始めたプレイヤーが登場してきています。

 

 3つめが、サービサーのパートナーシップ戦略です。既存の企業がスタートアップ企業などと一緒にチームをつくり、新しいサービスの開発に取り組むという動きが活発になってきています。

 

 こうしたトレンドについて、具体的な事例を紹介していきます。

 

既存の技術の組み合わせや応用から新たなサービスを提供

 まずは、既存の技術を組み合わせたり応用したりすることで、新たなサービスを生み出す例です。

 

 スタートアップ企業のリモートアシスト(大阪市)が提供する視覚障がい者向けのサービス「遠隔援護サービス」です。視覚障がい者が頭に装着した小型カメラから遠隔地にいるサポート者に映像が送られ、郵便物の代読や身だしなみのチェック、形が似たものの見分けなどのサポートを行うことで、障がい者の困りごと解決の手伝いをします。視力が衰えた高齢者にもニーズがありそうです。

 

小型カメラを利用して視覚障がい者をサポートする「遠隔援護サービス」(資料:リモートアシスト)

 次は、天気予報サイトを運営しているウェザーニューズ(千葉市)のIoT花粉観測機「ポールンロボ」です。ウェザーニューズは2005年から毎年「花粉プロジェクト」を実施しています。全国のプロジェクト参加者・約1000人に「ポールンロボ」を配布して、家の軒先に吊るしてもらって、花粉の飛散量を観測しています。観測データはウェザーニューズに送信され、全国の花粉予報に活用されています。また、個々の参加者は自宅周辺の花粉飛散量を知ることができます。

 

 「ポールンロボ」は進化しています。以前はWi-Fi環境がないと使えなかったのですが、2019年からは「ポールンロボ」に通信機能を搭載したことで、Wi-Fiがない家庭でも利用できるようになりました。

 

自宅の花粉飛散量を測定するIoT花粉観測機「ポールンロボ」(資料:ウェザーニューズ)

 ホームセキュリティを手掛けるセコムは、不在時に荷物を受け取る宅配ボックスに、こじ開けなど扉が不正に開かれた場合は緊急対処員が駆け付けるセキュリティ機能をプラスしました。宅配ボックスに異常を知らせる信号を送信する機能を搭載して、防犯対策と物流効率化を両立するサービスとしています。

 

こじ開け対策付きの戸建て住宅用宅配ボックス「セコムあんしん宅配ボックス」(資料:セコム)

 もう一つ、宅配ボックスを活用した新サービスを紹介します。低コスト・省電力の新通信規格「LPWA(ローパワー・ワイドエリア)」を利用した宅配ボックスです。この宅配ボックスは街中に設置して、地域住民が利用することを想定しています。運営しているのは、2015年設立のウィルポート(東京・中央区)というスタートアップ企業です。

 

 まず荷物を届けに来た配達員は、スマホで連絡先を登録し、配達伝票にある受取人の電話番号を入力します。配達員が宅配ボックスの番号を指定すると、サーバー側から暗証番号が届きます。扉を開けて荷物を入れ、暗証番号をセットして施錠します。扉を閉めた情報がサーバー側に届くと受取人のスマホに扉番号と暗証番号を通知します。受取人は指定された宅配ボックスの扉を暗証番号で開けて荷物を受け取ります。

 

「LPWA(ローパワー・ワイドエリア)」を活用した宅配ボックス「まいどうもポスト」(資料:日経コンピュータ)

サービスの形態やプレイヤーが変容

 2つめのサービス形態やプレイヤーが変容している例を紹介します。

 

シャープは、調理家電「ヘルシオ」シリーズのユーザーを対象に、専用の料理キット宅配サービス「ヘルシオデリ」を提供しています。あらかじめ調理に適したサイズにカットした食材を自宅に届けて、「ヘルシオ」で調理してもらおうというサービスです。クラウドにつながる機種では配送状況の通知や、メニューのダウンロードもできます。外食業界や食品業界とのパートナーシップで、家電の売り切りから食生活の提案へとサービスを拡大しているわけです。

 

シャープ「ヘルシオデリ」(ミールキット宅配サービス):家電販売から食生活の提案へ(資料:シャープ)

 食品関連では、クックパッド(東京・渋谷)がレシピをキッチン家電に読み取り可能な形式に変換して、対応するキッチン家電向けに提供する「Oicy」(オイシイ)というサービスに取り組んでいます。レシピに合わせてキッチン家電を自動で制御できるようにすることで、レシピ提供にとどまらず、新しいユーザー体験をつくり出そうと考えています。

 

 参加している企業も多様です。シャープ、日立製作所、タイガー魔法瓶といったキッチン家電メーカーや、クリナップやLIXILといったシステムキッチンメーカーに加え、スタートアップ企業なども参加しています。SIRU+(シルタス)(東京・港)は買い物履歴から栄養管理をするアプリを開発しています。オンキヨースポーツ(東京・墨田)は、食トレアプリ「food coach」の制作、販売を手掛けています。椎茸祭(東京・渋谷)は、シイタケを中心とした菜食だしをつくっています。プランティオ(東京・渋谷)は、IoTを搭載しAIのサポートによるプランターを開発しています。

クックパッド「Oicy」(スマートキッチン家電へのレシピ提供サービス)(資料:クックパッド)

パートナーにはスタートアップ企業も参加

 クックパッドの「Oicy」は、トレンドの3つめに挙げた「サービサーのパートナーシップ戦略」の例でもあります。従来から手掛ける事業領域にとどまらず、新しいサービスを開発して事業領域を広げていくために、パートナー企業と協力していくという訳です。

 サービサーのパートナーシップ戦略の例をもう一つご紹介します。

 パナソニックは、くらしの統合プラットフォーム「HomeX」を提供していますが、このHomeXを活用して新しいサービスを開発するために、様々な業種の企業と連携して「HomeX Cross-Value Studio」を開始しました。

 ここには様々なスタートアップ企業などが関わっています。こうした様々な企業との協業から、これまでになかった新しいサービスが生まれてくるかもしれません。

  • 香りのパーソナライズに取り組む CODE Meee(コードミー )(横浜市)
  • セキュリティ技術のBlue Planet-works(東京・渋谷)
  • コールセンターなどで活用されている、声から感情を読み取るAIを開発するEmpath(東京・渋谷)
  • 電力プラットフォーマーのJEPCO(東京・千代田)
  • チカク(東京・渋谷)が運営する、離れて暮らすおじいちゃん おばあちゃんに親孝行ができるサービス「まごチャンネル」
  • 世界最小クラスの紛失防止デバイスを手掛けるMAMORIO(東京・千代田)
  • 全国の農家や漁師などの生産者と会話しながら直接食材を買えるオンラインマルシェ、ポケットマルシェ(岩手県花巻市)
  • 「世界の食をもっと楽しく」をミッションとして食の世界にイノベーションをもたらすフーディソン(東京・中央)が運営する鮮魚店「sakana bacca」や飲食店専門の鮮魚仕入れ「魚ポチ」
  • スマートホームセキュリティソリューションを手掛けるSecual(東京・渋谷)
  • 出張「作り置き」サービスのSHARE DINE(東京・渋谷)
  • アグリゲート(東京・品川)が首都圏で展開する次世代八百屋「旬八青果店」
  • ビビッドガーデン(東京・渋谷)が運営する、こだわり農家のオンライン直売所「食べチョク」
  • CREARC(東京・港)が運営する撮影機材特化型のシェアリングアプリ「Totte(トッテ)」
パナソニック「HomeX」のパートナープログラム「HomeX Cross-Value Studio」には様々なサービスを提供する企業が参加する(資料:パナソニック)

 IoT技術を使ったデバイスやサービスは、様々な企業の間で連携しながら進歩、変容しつつあります。こうした技術の活用や、企業間の連携・コラボレーションに住宅業界も参入することで、新たなイノベーションが創出されることに期待しています。

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